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窓辺で口笛を吹きながら、絵本を開いた。わたしの一番好きな絵本。おばあちゃんからもらった宝物。あれから十一年。
友だちの葵と口げんかをしたのは今朝のこと。ちょっとした心のすれ違いだった。
緑の空気を吸いたくて窓を開けると、葉擦れの音がさわさわ聞こえてくる。舞いこんだ風が絵本のページをパラパラとめくる。飛ばされた柳の葉が一枚、小さく色をそえていた。わたしは大切に絵本を閉じて、立ちあがった。
やっぱりメールじゃ伝わらない。手紙を書こう。そう思いたって文房具屋さんへ向かった。
レターコーナーで選んでいたわたしは、ふと視線を感じて顔を上げる。ひとつのレターセットが目に留まった。
青い空の中に、虹色の雲が浮かんでいる。
それを見たとき、胸の奥深く眠っていたおばあちゃんとの記憶が思いおこされた。
「彩、見てごらん。お空が鱗雲でいっぱいだね。」
「おばあちゃん、見て見て。お空にまどがあいたよ。あのキラキラしてるのなあに?」
「彩雲だよ。まるで七色の龍が通ったあとみたいだろう。あれを見た人は幸せになれるんだよ。」
あのときとそっくりな雲。きっとわたしと葵を結んでくれる。祈りにも似た気持ちを抱えて、わたしはレジへ足を向けた。
何も聞こえなくなるほど夢中で手紙を書く。宛て名を書きおえてひと息つき、大きくのびをした。気づけば小指が真っ黒だった。
手紙を机の上に置いて、そのままわたしは眠りについた。夢の中で風の音が聞こえた。
翌朝、教室に着いたとたん、葵が小走りで近寄ってきた。
「お手紙、ありがとう! わたしこそごめんね。」
(えっ、まだ手紙渡してないんだけど!?)