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蝶蝶の短い、一夏の命。その中でわたしは罪を犯しました。下に悲しみを残してきたのです。小さな、でも透明な悲しみ。
暑い夏がくる一瞬前。爽やかな風が梅雨の終わりを告げました。紫陽花に主役を交代してもらった朝顔が太陽のまぶしさに顔をうつむかせます。
男の子は、見つけました。美しい羽は折れていました。空中の舞姫は、土の上ではただの虫でした。蝶蝶を見つけたのです。
心優しい男の子はそっと手で抱えるとじっとのぞきこみました。柔らかい皮膚の上でよろよろと蝶蝶は歩きます。
教室まで蝶蝶を持ちかえった男の子は銀色に光るクッキーの缶に蝶蝶を入れてやりました。意地悪な少年たちに見つからぬようロッカーの奥に隠します。
授業が始まっても、男の子は蝶蝶のことしか考えていませんでした。黒と黄色のまだら模様。黒板の上で先生がチョークを滑らせる堅い音だけが聞こえます。
長い一日が終わりました。みんながいなくなるのをずっと待って教室があかね色でいっぱいになったころ、やっと男の子は缶を引っぱりだすことができました。